上場企業オーナーの相続対策に公益法人が使われる
株の取引きやIR情報をよく見る方はご存知かもしれませんが、上場企業の大株主に資産管理法人や公益社団法人、財団法人が入っていることがよくあります。
大塚家具では「きちょう企画」という持ち株会社がありました。
ちょっと前にお家騒動で話題になった出光もHPによると、創業家の資産管理会社(持ち株会社)が17%、公益財団が2つで13%くらいもっているようです。創業家の個人では1.5%ずつくらいが記載されています。
なぜこういった状況になるかというと、まず社団法人や財団法人には持ち分の概念がないので理事長が世襲でも相続税がかからないというのがあります。次に創業家から法人に株式を移転するときに受け皿が株式会社だと寄付でもみなし譲渡で所得税がかかりますが、公益法人で措置法の適用を受けると、譲渡所得税も非課税となるし、寄付金控除なども受けられます。
ただし、メリットが大きい反面、デメリットとしては配当金などの収入は公益目的で使わないといけないし、理事や評議員も息がかかった人とはいえ乗っ取られる可能性があります。
そのためある程度は株式会社で持ち株会社を作って、残りは公益法人へ…というのが上場会社オーナーの対策としてやられてきました。あとは配当課税が大株主で3%を超えると総合課税になるというのもあります。これも以前は5%でしたが、現行は3%となっています。
一般社団法人でも可能な相続税対策とは?
本題になりますが、公益ではなくても一般社団法人や一般財団法人でもこれと似たような対策で相続税回避が可能ですので、財産をこれらの法人に移してしまおう、という動きがありました。
租税回避規定はあるのですが、それもかいくぐって一般社団法人に移しているケースです。上場企業であれば公益法人を設立する、というところまでやるのでしょうが、中堅中小企業レベルではそこまではなかなかでも、一般社団法人なら…ということもあると思います。
一般社団法人の設立や運営はそれほど手間がなくて、比較的簡単にできてしまうので、特に問題視されました。
そのため同族支配の一定の一般社団法人については財産の一部を相続税の対象にする、というような改正になります。公益法人や非営利型の一般社団法人については親族制限がありますので、今回の対象にはなりません。
実務的にでてくることはあまりないと思いますが、今後は相続税の申告書に相続人とともに一般社団法人がでるケースもあるかもしれません。
平成30年度改正で制限された一般社団法人による相続税対策
平成30年度税制改正で一族で実質的に支配している一般社団法人に財産を移転しても相続税の回避ができないような手当てがされています。
一定の経過措置がありますが、原則として平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡について、下記の課税対象額を特定一般社団法人が遺贈により取得したものとみなされて相続税が課税されます。
課税対象となる法人…特定一般社団法人等
一般社団法人や一般財団法人のうち課税対象となる法人を特定一般社団法人等と呼び、次のいずれかに該当するものとなります。
- 相続開始直前における同族役員(理事)数の総役員数に占める割合が2分の1を超える
- 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上である
※同族役員とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他、その被相続人と特殊の関係のある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいいます。
対象となる被相続人(対象役員)
相続税の対象となるのは相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の役員(理事)であった者が亡くなった場合です。
つまり、亡くなる5年以内のいずれも特定一般社団法人の理事になっていなければ特定一般社団法人に該当しても相続税の課税はありません。
相続税が課税される課税対象額
遺贈とみなして相続税が課税される対象額は、「特定一般社団法人等の純資産額÷死亡の時における同族役員(被相続人を含む)の数」となります。
本来の目的ではないやり方で使われると…
本来の目的ではなく、節税目的で使われると、真面目に運営している一般社団法人などにも影響がでることもあるので、いたちごっことはいえ、租税回避につながるような使い方を専門家が積極的に提案するのはどうなのかな…という話ですね。
意図せずに運営していてたまたま該当してしまう人がかわいそうかな、と思います。