30年度税制改正で小規模宅地等の特例の租税回避制限が入ります

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小規模宅地の特例のおさらいから

二つ目のテーマの小規模宅地の特例ですが、改正内容の前にちょっと制度のおさらいをしたいと思います。相続税の小規模宅地の特例ですが、平成25年度の改正で少し変わっていますが、そのあたりも含めておさらい、という感じです。

特定居住用宅地等とは…

被相続人や同一生計親族の自宅の敷地ですが、特定居住用宅地等といいます。これは330㎡まで80%の評価減となります。25年度の改正前は240㎡でしたので、結構広い自宅まで対象となりましたが、基礎控除の縮小にあわせて影響を受けないようにいうことだったように思います。

特定居住用宅地等についてはこのほかに二世帯住宅や老人ホーム入居時の取り扱いについても改正されています。

2世帯住宅は以前は中階段でつながっているとか物理的に行き来できないとだめだったのが、今は区分所有登記されていなければ同居扱いということになっています。

有料老人ホームについて、以前は特養とか割と公的な介護施設が入居なら実際に住んでいなくてもOKだったものが、有料老人ホームなどでも、入居時点で要介護認定を受けていて、その後自宅を賃貸したり、空き家に他の親族が入ってきたり、ということがなければ適用可能になりました。

事業用宅地、貸付事業用宅地とは??

次に事業用宅地ですが、貸付用とそれ以外にわけられて上の部分は一般の個人事業ですね、商店とか事務所とかでも個人事業としてやっている場合です。事業継続要件もありますが、400㎡まで80%減額となります。

次に貸付用のうち同族会社の事業用の敷地の場合には特定同族会社事業用宅地となりますので同様に400㎡まで80%減額です。それ以外の駐車場とかアパートの敷地については貸付事業用宅地として200㎡まで50%の減額となります。

特定事業用と特定居住用の重複適用が可能に…

平成25年度の改正では特定事業用と特定居住用はそれぞれ限度面積まで重複適用が可能となり、貸付事業用が含まれる場合には面積按分が必要となります。

重複適用可能になったことで、特定事業用を受けられるかどうかの判定も事前対策としては必要となってきました。同族会社の場合には家賃0でというケースも多いのですが、使用貸借は貸付けではないので適用対象外となります。経営的には社長からタダで借りてもいいのですが、同族会社事業用宅地等の特例を受けるためにはある程度は家賃を払っておかないといけません。

特に27年からの基礎控除縮小後は、特定居住用宅地に該当するかどうかで相続税がかかるかどうかの切れ目になるケースが増えています。ただし、申告要件がありますので、当初申告で注意が必要な特例です。

特定居住用宅地、家なき子特例とは?

その特定居住用宅地に該当するかどうかの要件が次です。

お父さんが死んで、お母さんが相続する場合には特に制限はありません。お母さんが住み続けようが、施設に入ろうが、売却しても特例適用が可能です。次に同居親族が相続した場合は居住継続と所有継続で適用可能です。3つ目がこれ以外の親族が相続したケースです。これはちょっと条件が複雑ですが、通称「家なき子」といわれています。本当は家なき親族ですが、安達祐実のドラマからだと思いますが、税理士界隈ではこう呼ばれています。

条件はまず配偶者や同居親族がいないことです。基本的には二次相続で空き家になるケースが想定されます。さらに問題になるのが、相続開始前3年以内は相続人が借家住まいという条件です。所有継続要件もありますが、これらの条件がクリアされると、同居していなくても特定居住用宅地の特例適用が可能でした。

特定居住用宅地の家なき子特例に制限が入ります

租税回避行為が行われていたために制限が設けられました。こういった法律や制度の穴をつくような節税手法はあまり目立ってやるとこういった改正に繋がります。

相続人本人名義で自宅をもっていますが、これだと家なき子の制限に引っかかるために子供や孫に建物だけ贈与したり、同族会社で買い取ったりして、建物名義を相続人から外しておくことで3年たつと特例を受けられるようになってしまっていました。あとは遺言を書いて、子供ではなく、孫が遺贈で相続をすると親名義ですから適用が受けられてしまっていました。

これが今回の改正では、「自己またはその配偶者」名義というところから、「3親等内の親族、同族会社、一般社団法人等名義」というところまで除外対象が膨らんでいます。どうせやるなら第三者に売却しないといけなくなっています。

さらに、売却しただけではだめになっています。売却後にそこに住み続けると、次の相続開始時に居住していた家屋を所有していたことがある、という除外項目にひっかかりますので、引っ越すことも必要になります。

形式的な要件クリアというのはできなくなるかな、という感じです。

貸付事業用宅地にも租税回避制限が加わります

次が貸付事業用宅地の制限です。我々も金融資産が多い人には、空き地にアパートを建てたり、投資用の都心のマンションとか購入すると節税になります、という提案はします。

しかし、タワーマンションの訴訟になったように亡くなる直前に買って、直後に売ったり、先ほどの居住用の要件が空き家になって満たさないから慌てて貸家にしたりして、相続税対策をする、というような提案を制限する、という趣旨での改正だと思われます。

改正後は相続開始前3年以内の貸付開始の土地については小規模宅地の特例が対象外となります。ただし、3年を超えて事業的規模、基本的には5棟10室基準で貸し付けをしていて、たまたま直前に貸したようなものは除かれるということになります。

こんな感じで制限が入りますが、やはり最近は相続ビジネスが盛り上がりをみせていていろいろな提案がでてきていますし、それが研修とかSNSなどで発信されて拡散されるということがあります。そういうことで、目立ちすぎるとモグラたたきのように潰していく、というのが最近の風潮のようです。