遺贈寄付-公益法人などへ遺言を使って寄付をするにはどうすればいいのか?

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最後の社会貢献として

社会貢献という言葉がありますが、最後の社会貢献としてお世話になった介護施設や公益法人に遺産を寄付をしたいという方も多いようです。

ご自分の意思で公益法人などに寄付をするには、遺言にその旨を記載する必要があります。最近では「遺贈寄付」などと言われているようですが、公益法人などへの遺贈による寄付となります。

民法では法定相続人が相続分の割合に従って遺産を分割することになっていますから、遺言がなければ相続することはできないのです。

ただし、民法では亡くなった方が遺言でその財産の処分や寄付先を指定することができます。

法律上はこれを遺贈といいますが、遺贈の相手先は相続人以外の人でも可能です。

個人でも法人でも、公益法人でも営利法人でも遺贈による遺産の寄付はできるのです。

遺言にこのように記載すればいいでしょう。

寄付するではなく、遺贈すると書きます。

第〇条

遺言者は、遺言者名義の預貯金の中から社会福祉法人○○会(神奈川県横浜市××区----)に金○○万円を遺贈する。

公益法人などに遺贈寄付する財産が現金や預金の場合

公益法人に遺贈する財産が現金や預金の場合にはそれほど難しい手続きは必要ありません。

法人に対する遺贈では相続税は原則としてかからないのです。

相続税や贈与税の租税回避のため、不当に税金を回避するために行われる場合のみ公益法人を個人とみなして相続税が課税されます。

通常の善意で行う遺産の寄付、遺贈寄付については相続税は非課税と考えてよいでしょう。

受け取った側については個人からの贈与なので原則は受増益に対して法人税が課税されるのですが、公益法人などはもともと法人税が課税されていませんから通常はこちらも無税で受け取ることが可能です。

ただし、相続税の申告書には第14表に相続税がかからない遺贈寄付の明細を記載するところがありますので、記載をして申告をすることになります。

公益法人などに遺贈寄付する財産が不動産などの場合

遺贈寄付する財産が不動産の場合には多少面倒な手続きがあります。

そのため、実際にはあまり不動産の寄付は受け付けてくれないところもあるかと思います。

不動産などの譲渡所得の起因となる土地や建物を法人へ贈与や遺贈した場合には、その時の時価により法人へ売却したとみなして譲渡所得課税をするという取扱いがあります。

いわゆる「みなし譲渡課税」です。

遺贈により法人へ遺贈した場合には原則として相続開始時点でその時の時価により売却したこととして譲渡所得税が課税されます。

これは財産の取得時から寄付時点までの値上がり益に対して所得税が課税されるというもので、亡くなってから4カ月以内に準確定申告が必要となります。仮に準確定申告で譲渡所得税が発生した場合には相続税の債務控除で相続財産から差し引くことは可能です。

ただし、原則として財産の遺贈を受けた法人が公益法人などである場合には、やはり不当に相続税や贈与税を減少する結果となる場合を除いて譲渡所得税が課税されないという特例もあります。

基本的には不当に減少することを目的にした遺贈寄付ではないはずですので、非課税になるはずですが、実はこの特例については国税庁長官の承認を受ける必要があります。

これは寄付をした人、遺贈寄付の場合には遺贈した人の相続人が寄付の日から4ヶ月以内に手続きが必要となります。

でも不動産を遺贈寄付するのはちょっと面倒くさいように思います。

最近では不動産そのものを遺贈寄付するのではなく、売却して換金したうえで寄付するように遺言に記載する「精算型遺贈」という形もあります。

精算型遺贈のケースでは準確定申告で譲渡所得税の申告をするのか、不動産は相続人が相続して現金で遺贈したことと考えるのかという論点も生じます。

不動産は相続人が相続して売却したと考えると、亡くなった方の準確定申告ではなく相続人が譲渡所得税の申告と納税をすることになってしまいますので注意が必要です。

このように考えると、なるべくなら生前に財産を処分して現金で遺贈寄付をしたいところですね。

スムーズに遺贈寄付をするための準備

また、亡くなった後でスムーズに遺贈寄付が実行されるように、次のような準備も必要と思います。

  • 法律の専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)に相談して進める
  • いざというときに遺言を実行してくれる遺言執行者を指定する
  • 寄付する予定の法人に遺言の書き方などの相談を遺言を書く前に行う
  • 公正証書遺言で遺言を作成する
  • 遺贈寄付の理由などについて付言の形で遺言に記載する
  • 遺留分を侵害しないように遺言を作成する

公益財団法人日本盲導犬協会でも遺贈による寄付の受付をしているようなので、興味を持った方は是非ご検討ください。