中古物件を購入した場合の取得価額の算定方法

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超低金利の昨今、当社のお客様でも中古物件を購入して賃貸するというケースが増えてきています。

不動産経営、アパート経営の目的が変わってきた

従来は不動産経営といえば地主さんが空いている土地を有効活用して固定資産税や相続税を節税するというのが定番でした。

それがここ数年でビジネスとして賃貸経営を行いたいというサラリーマン大家さん、地主さんのお子様でも投資という視点をもって賃貸経営をしたいというお客様も増えています。

中古物件を購入したときの処理はどうする?

そんな中でご相談を受けるのが中古物件を購入した場合の取得価額の算定方法です。

自分で建てる場合にはそれほど問題がありません。

請負契約書や見積書などをもとに集計して建物と設備を区分していくことになります。

もちろんある程度資料を読み込まないと集計できませんし、最後は割り切りで振り分けないといけない部分もあります。

建物を建築した場合には建物本体と建物付属設備とを区分して処理することになります。

建物なのだから全体を建物として処理すればいいではないか…と思う方も多いと思います。

建物と建物付属設備を区分して節税する

なぜ分けるのかというと建物と建物付属設備では減価償却方法が異なるのです。

建物については平成10年以降は定額法しか選択できませんが、建物付属設備は届出をすることで定率法も選択できます(税制改正により現在はできない)。

法人であれば法定償却方法が定率法なので届出すら必要ありません。

また、法定耐用年数が鉄筋コンクリート造りの賃貸マンションの場合は47年ですが、建物付属設備の例えば給排水設備でいえば15年になります。

定額法で47年で償却するのと定率法で15年で償却するのとでは償却するスピードが全く違います。

長い目でみると同じになりますが、なるべく早く費用化して節税したほうがお得感はあります。

47年間保有するかどうかはわからないし、金利等を考えても早期回収メリットがあるからです。

金額が区分されていない場合にどうやってわけるの?

さて、このように区分すれば節税になる取得価額の算定ですが、中古で購入した場合には土地建物一括でいくらというケースがあります。

土地と建物すら契約書でわかれて書かれていないので区分のしようがないし減価償却できないというケースです。

このようなケースでは合理的な方法で区分すればいい、逆にいうとそうするしかないことになります。

その区分方法としては国税不服審判所の裁決事例を紹介します。

中古マンションについては、土地と建物の価額の区分について、その売主等においても把握できず、また、類似譲渡事例等もないところ、相続税評価額や固定資産税評価額等を基に合理的と認められる価額を見積もる必要があるが、固定資産税評価額は同一の機関で土地及び建物の評価を行うものであることなどから、本件においては、土地と建物の固定資産税評価額の比を一括購入価額に乗じて建物の価額を算出し、建物本体と建物附属設備のそれぞれの取得価額については、建築時の工事費の割合が把握できることから、その工事費の割合を基に計算することが相当と認められる。

1.土地と建物については固定資産税の比率で按分する。
2.建物本体と建物付属設備とは建築時の工事費の割合をもとに計算する。

まず、土地と建物の区分についてここでは固定資産税の比率によることが示されていますが、固定資産税評価額で行った場合に最高裁まで争って納税者が敗訴した事例もあるようです。

この裁判では相続税評価額によるべきという判決になっています。

合理的な按分にはいくつか基準となる割合の取り方が考えられます。

相続税評価額、固定資産税評価額、工事価額、建築費…など土地については一物四価などと言われてケースによって価額の計算が異なります。

いくつか計算してみて合理的と判断されるものを選択すべきであると考えられます。

2の建物本体と付属設備の区分について工事の割合がわからない場合はどうすればいいでしょうか?

この裁決事例は本体70%、付属設備30%で申告したことについて争われています。
そんな概算で計算するのはダメというのが審判所の見解で、建築時の実額ベースで按分することが求められています。

では8:2ならいいのか、9:1ならいいのか…というのは見解が示されていませんが、実額がどうしてもわからない場合には全て建物本体で償却するのがいいように思います。

無難な取り扱いといえばそうなりますが、あえて税務リスクを負う必要はないように思います。

概算割合をつかうのであれば、統計的データ等裏付けとなる根拠が必要であり、立証責任を伴うからです。