解説!広大地の評価通達改正に関するパブリックコメント(財産評価基本通達)

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税務の取り扱いの変更にあたっては、事前に意見を募集するパブリックコメントを実施するケースがあります。

平成29年度の税制改正大綱で項目にあがっていた広大地の特例評価の改正に関して6月22日にパブリックコメントがでています。

500平米以上の土地所有の地主に影響大

過去にブログでも記事にしましたが、地主系の資産家にとっては結構大きな影響があります。

税制改正速報!地主さんは増税?相続税や贈与税の広大地評価が見直されます
財産評価基本通達で広大地とは? 【広大地の定義】 『広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市...

パブリックコメントは新旧対象方式

パブリックコメントは財産評価基本通達の新旧対照という形ででています。

通達の項目番号も変更されているため、影響のある通達が一通りあがっているようです。

財産評価基本通達の改正案によると…

(地積規模の大きな宅地の評価)

20-2 地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500平米以上の地積の宅地、 それ以外の地域においては 1,000平米以上の地積の宅地をいい、次の⑴から⑶まで のいずれかに該当するものを除く。以下本項において「地積規模の大きな宅地」 という。)で 14-2((地区))の定めにより普通商業・併用住宅地区及び普通住宅 地区として定められた地域に所在するものの価額は、15((奥行価格補正))から前 項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、次の算式に より求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する。

⑴ 市街化調整区域(都市計画法第34 条第 10 号又は第11 号の規定に基づき宅 地分譲に係る同法第4条((定義))第 12 項に規定する開発行為を行うことがで きる区域を除く。)に所在する宅地

⑵ 都市計画法第8条((地域地区))第1項第1号に規定する工業専用地域に所在する宅地

⑶ 容積率(建築基準法(昭和25 年法律第 201 号)第52 条((容積率))第1項に 規定する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。)が 10 分の 40(東京都の特別区(地方自治法(昭和22 年法律第 67 号)第281条((特別区))第1項に規定する特別区をいう。)においては 10 分の30)以上の地域に所在する宅地

(算式)

規模格差補正率= (A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の地積(A)×0.8

上の算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応 じ、それぞれ次に掲げる表のとおりとする。

わかりやすくなった適用要件

まず適用要件については、かなりわかりやすく、簡潔になっています。

広大地といっていたものが、「地積規模の大きな宅地」と名称も変更されています。

地積規模の大きな宅地とは?

基本的に定義、適用要件についてはカッコ書きの中を読めばわかるようになっています。

  • 三大都市圏においては500平米以上の地積の宅地、 それ以外の地域においては 1,000平米以上の地積の宅地
  • 市街化調整区域で開発行為ができない地域、工業専用地域、指定容積率400%(東京都特別区は300%)以上の地域は適用外

これが地積規模の大きな宅地(旧広大地)となります。

そして、地積規模の大きな宅地でさらに条件があります。

「普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地域に所在するもの」の価額とされています。

つまり、路線価図に書いている地区区分で限定が入っています。

ただ、この要件であれば誰が判定しても基本的には同じ結果になります。

面積と容積率と地域のみだからです。

従来頭を痛めていたマンション適地かどうか、現に開発されているかどうか、潰れ地が生じるかどうか…これらは一切関係がありません。

補正率はどうなるの?

規模格差補正率とは?

規模格差補正率は算式で計算することになります。

規模格差補正率= (A×B+C)÷地積規模の大きな宅地の地積(A)×0.8

三大都市圏の普通住宅地で1000平米だとどうなるでしょうか?

(1000平米×0.9+75)÷1000×0.8=0.78(22%減)

となります。

現行では1000平米の場合は、45%減の補正率ですから、各種画地補正を入れたとしても評価は結構あがりそうに思います。

財産評価基本通達の重複適用はできるのか?

現行では財産評価基本通達の15(奥行価格補正)から20-5(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)及び24-6(セットバックを必要とする宅地の評価)との重複適用が認められていないことに対し、他の影響される通達をみると、改正案においてはこれらの重複適用が認められることになっています。

基本的には他の補正率等との重複適用が可能な補正率になるため、単純に規模格差補正率の差だけで評価額があがる、さがるの判定はできません。

得するの?損するの?

これは単純に比較できないのは上述の通りですが、適用要件が大幅に緩和され、わかりやすくなったことのメリットが大きいように思います。

平成29年では広大地の対象とならなくても、平成30年は地積規模の大きな土地の対象になる可能性があります。

そして、従来は不動産鑑定士の意見書が必要だからといって意見書代が数十万円とか、成功報酬だとかいう話もなくなります。

さらに、当初申告で提出したら財務調査でひっくり返って多額の延滞税や過少申告加算税の納付が必要になる、、ということもなくなりそうです。

申告する税理士としても胃の痛くなるような思いをすることが減りそうなので、ここは歓迎したいと思っています。