海外資産の相続税課税、国税当局は本気です

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国際戦略トータルプラン

国税庁は平成28年10月25日に、「国際戦略トータルプラン-国際課税の取組の現状と今後の方向-」を公表しました。

国際戦略トータルプランなんて大層なタイトルで、トヨタとか大企業の世界戦略みたいな感じです。これは、国税庁HPの内容によると、下記の趣旨で作られているもののようです。

近年、経済社会がますます国際化している中、いわゆる「パナマ文書」の公開やBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、国際的な租税回避行為に対して、国民の関心が大きく高まっている状況にあります。

国税庁としては、国内のみならずこうした国際的な動きも十分に視野に入れて適正公平な課税を実現していくことが、国民からの信頼の確保につながるものと考えています。

公表資料中、国際戦略トータルプランの柱として、1.情報リソースの充実、2.調査マンパワーの充実、3.グローバルネットワークの強化、が挙げられております。

国際戦略の具体的な中身

具体的には、次のようにまとめられています

1.情報リソースの充実

  • 国外送金等調書の活用
  • 国外財産調書及び財産債務調書の活用
  • 租税条約等に基づく情報交換
  • CRSによる金融口座情報の自動的交換
  • 多国籍企業情報の報告制度の創設

2.調査マンパワーの充実

  • 局統括国税実査官(国際担当)、国際調査課
  • 局、署国際税務専門官
  • 重点管理富裕層PTの設置、拡大
  • 国際課税関係の体制整備

3.グローバルネットワークの強化

  • 租税条約等に基づく情報交換
  • CRSによる金融口座情報の自動的交換
  • 国際的な枠組みへの参画
  • 徴収共助制度の活用
  • 相互協議の促進

国税当局の狙いは資産家による財産の海外逃亡

国際税務というと世界展開をしている大企業や東南アジアなどに進出している中堅企業に特有の話題だと思われがちですが、国税当局はこれらだけではなくいわゆる富裕層についても目を見張らせているということがわかります。

国税庁ではこれらトータルプランにより、富裕層や海外取引のある企業による海外への資産隠しのほか、国外で設立した法人や各国の税制・租税条約の違いを利用して税負担を軽減する等の国際的な租税回避行為に対応していきたい考えのようです。

租税回避についてはいたちごっこのような感じもしますが、国税当局もあらゆる情報網を駆使して把握、徴税を目指してくると思われます。

隠すつもりや租税回避の意図がなくとも、そのようなスキームによく利用される商品を購入していただけでも問題視される可能性もあります。

特に、上記2の調査マンパワーの充実でもかかれている通り、重点管理富裕層PT(プロジェクトチーム)なんていわれると、なんだかすごい感じがします。

刑事ドラマでいうとSATのような感じなのでしょうか?

我々一般庶民も無関係とはいえない国際相続

一方で、そのような大資産家の相続ではなくとも、国際的な相続はどんどん身近になってきています。

海外赴任で駐在中に死亡するとか、東南アジアで現地通貨で預金するとか、国際結婚というのも最近は珍しくはありません。

相続手続きは日本の制度が使えるのか、海外の法制度を使うのか、資金の引き出しは容易にできるのか、など税制以外にも多くの課題があるようです。

いずれにしても事前準備が必要なことは間違いないようですね。