相続対策や事業承継の対策手法でここ数年よく聞くのは信託や一般社団法人を活用したものではないでしょうか?
平成20年前後からはじまった制度であり、社会の多様性もあって様々な利用方法が研究されています。
ただしどちらも相続税の対策というよりも財産の管理に使えるという印象です。
信託といえば信託銀行を思い浮かべるかもしれませんが、こちらの信託は民事信託や家族信託と呼ばれています。
不特定多数との間でなく家族内のことであれば報酬をもらっても特に問題がないという規制緩和があって一般の方でも利用可能となりました。
信託では基本的に3種類の登場人物がでてきます。
委託者、受託者、受益者の3人です。
委託者は基本的には財産をもっている資産家となります。
資産家が財産の管理を受託者に依頼します。
委託した財産に関する収益を受け取るのが受益者です。
委託者=受益者となるケースを自益信託、委託者≠受益者となるケースを他益信託といいます。
また、委託者=受託者となるケースを自己信託といいます。
これをどのように相続対策にいかすか…というと、自益信託で他人に自分の財産管理を委託することで認知症や高齢による判断力の低下に備えることができます。
また、自分以外の人、たとえば息子などを受益者とする場合、つまり他益信託の場合には税務上は贈与税の対象となります。
ただし贈与税の対象となりますが現物を渡すのと異なって管理については受益者が行うことになります。
つまり、息子が管理能力がない場合や息子一人の管理下におくには不安がある場合には第三者や同族法人、一般社団法人などに管理してもらうことも可能となります。
現物財産の贈与と比較した利点が信託を活用したメリットといえます。
また、信託の目的が終了した場合、たとえば父親である資産家の管理をするのが目的の信託であれば父親の死亡によって信託を終了するようにするのもいいでしょう。
その場合、残った財産を誰に帰属するかをあらかじめ決めておくこともできます。
たとえば父親の死亡時に残余財産を息子に帰属させると決めた場合には遺言で指定するのと同じ効果が期待できます。
この場合には相続税が課税されることになります。
このように信託を活用することで、生前贈与と同様の効果、遺言と同じような効果が期待できつつ、生前贈与や遺言と多少異なる効果を付加することもできるわけです。
もちろんどのような制度も万能というわけではないでしょう。
ただ相続対策や事業承継は家庭や企業によって千差万別、いろいろな悩みや課題を抱えています。
これらを解決させるためには様々な手法を研究する必要がある、ということだと思います。