広大地は平成29年中に相続時精算課税で贈与する?

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税制改正って年末に決まるの?

毎年年末が近くなると新聞紙面等をにぎわす税制改正の話題ですが、実際の税制改正の段取りについては一般の方はほとんど知られていないと思います。

年末に発表されるのはあくまでも税制改正大綱という、与党の方針発表にすぎません。

その税制改正大綱について内閣で議論されて、基本的にはそのまま閣議決定をされます。

閣議決定されたあと法律案という形でまとめられます。

税制改正大綱は、ある程度わかりやすい文章でまとめられますが、法律案の段階ではわかりにくいと評判の税法条文で起案されます。

その後、法律案は国会で審議され、3月末くらいに国会を通過して成立する段取りになります。

実際には3月末に成立していますが…

3月末に成立した改正税法ですが、すぐに適用スタートということでもありません。

原則的には遡って適用することはあまりありませんが、実際に適用が開始するのが来年からとか来期からというのは珍しくありません。

消費税の軽減税率のように法律として決まってから実際に適用開始するまでの間に延期されるものもあります。

中には適用開始するまでに翌年の改正で、一部変更されている、、なんてこともあります。

民主党政権時代の最後は結局、税制改正大綱はなかったものになってしまったという例もあります。

広大地評価が改正されていますが、適用開始時期は?

さて、平成29年度の税制改正では、資産家の相続対策に影響がありそうな改正がいくつかありました。

そのうちの2つ、広大地評価の見直しと自社株評価の見直しで適用時期がわかれています。

広大地の評価というのは著しく広い土地(横浜市などでは500平米以上)で、公共公益的施設(開発用道路など)の負担が生じる等の条件に該当した場合に土地の評価減が認められるという内容の制度です。

この評価方法が時価よりもかなり大きく減額されてしまうケースがでてきたりして節税目的で取引される事例が増えたため見直すこととされました。

つまり評価が下がり過ぎることがあるから是正するという改正になります。

ただし、肝心な改正後の計算式で使う率が公表されていないため、まだ改正の影響を計算できない状況です。

一方の自社株評価については、計算式に調整がはいっています。

平成29年の計算で使う類似業種比準価額の通達がまだでていないため正確な計算はできませんが、算式は決められているためある程度の影響額の計算は可能です。

利益について乗ずる係数が3倍から1倍に変更になったため、利益についての連動性が低くなり、配当金や簿価純資産に関する比重が高まることになりました。

この二つの改正、適用開始時期が1年違っています。

広大地の改正は平成30年1月1日以後の相続や贈与について適用されます。

自社株評価は平成29年1月1日以後の相続や贈与について適用されることになります。

何もせずに改正を待つか、できる対策を考えるか?

なぜ1年違うかは定かではないのですが、1年猶予があると考えるとやれる対策も出てくるわけです。

それが生前贈与です。平成29年に行われた生前贈与については古い規定が適用されます。

広大地については、従来の過度に減額しすぎると批判があるやり方でも平成29年中は合法的に認められます。

ただ、評価減をいくらしてもやはり元々面積が多いため、一度に贈与すると多額の贈与税がかかるケースもあります。

改正を考慮しても贈与税で支払うよりも、相続税で払ったほうが税金が安いのでは本末転倒です。

そこで考えられるのが相続時精算課税です。

相続時精算課税は自己責任で実行する

相続時精算課税では、2500万円を超えると超えた部分について20%の贈与税を前払いすることになります。

この前払い税金は、相続税の申告時点で精算されることとなります。
ただし、相続時精算課税で相続税の計算で持ち戻しになるとしても土地の評価自体は贈与時点で固定されますので、平成29年中の贈与については相続時点まで従来の広大地評価額がいきてくるわけです。

相続時精算課税については有利か不利かは相続を迎えるまでわからないというリスクのある制度です。

株式が良い例なのですが東芝の株とかどうでしょうか?

株価が高かったときに相続時精算課税をしていたとしたら、今相続を迎えると大変な相続税負担になります。

土地なのでそれほど値崩れしないとは思いますが、そういうリスクには注意が必要です。

また、登録免許税や不動産取得税についても相続よりも贈与のほうが多額になります。

こういったことを総合的に考えて、平成29年中で相続時精算課税で贈与をするのか、見送るのかの検討が必要となるのです。

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